やまと競艇学校の選手養成訓練とは?
やまと競艇学校の選手養成訓練

水上訓練の合間に、真剣な表情で大野教官の指導に聞き入る訓練生
全国で唯一、競艇選手を養成する「やまと競艇学校」。ここでは明日のスター選手を夢見て、訓練生たちが日々厳しい訓練に取り組んでいます。
今回は、訓練の指導に当たっている教官に実際の教育方針や理念についてのお話を伺うとともに、競艇学校の1日を取材しました。
1年でプロ選手へと育てるために自己管理を徹底的に指導
「全くの素人である訓練生を、プロの競艇選手へと育てるための期間はわずか1年です。 私たち教官にとっては非常に短く感じます」と、お話しいただいたのは、 (財)日本モーターボート競走会競艇学校養成課の大野信一係長。 現在、やまと競艇学校の主任教官のひとりとして、2009年4月に入学した第106期生25名の養成を担当しています。 教官は操縦や整備をはじめとするさまざまな実技やモーターボート競走法をはじめとする学科、 プロ選手としての心得を限られた期間のうちに習得させる必要があるため、少しの時間も無駄にできません。 訓練生の活動は、起床から課業、食事、消灯まで毎日が分刻みに決められており、 常に5分前の行動がとれるよう教え込まれています。
実戦さながらの模擬レースを指導する大野教官
訓練を安全・円滑に進めるために不可欠な自己管理能力がしっかり身につくように、規律を守る習慣は徹底して教育されます。 たくさんのお客さまが観戦し、多くのスタッフが関わって行われる競艇の世界では、分刻みの時間管理に基づいて競走が施行されています。 選手もスケジュールを厳格に守り、万全の気力・体調で競走に臨まなければならないことは言うまでもありません。 競艇選手にとって、何よりもまず習得しなければならないことが自己管理能力なのです。
「水の上」でも、「陸(おか)の上」でも、プロとしてふさわしい人物になるために」
自己管理のほかにも、やまと競艇学校では「礼と節」をモットーに、一般社会人としての人格形成を行っています。プロの競艇選手には、操縦・整備の技術と並んで、人間としての基本的な立ち振る舞いが求められるためです。
訓練の進み具合などについて教官同士のミーティングで共有
礼儀や節度など、プロの選手という大勢のお客さまに注目される立場ともなれば、当然ながらそれを疎かにすることはできません。お客さまや競艇場の関係者をはじめ、多くの人々に支えられていることに感謝の心を持てる、謙虚な人間であることが求められるのです。
怪我をせずに、1日の終わりを無事に迎えることが何よりも大切
毎日の訓練を行う上で、教官が最も厳しく指導しているのが安全についてです。常に危険と隣り合わせの模擬レースは、わずかな判断ミスが事故につ ながる恐れがあります。事故は、自らの怪我につながるだけでなく他の訓練生を巻き添えにしてしまう可能性もあるため、絶対に起こしてはいけません。しか し、頭では理解できていても、いざ水面に出るとどうしても負けたくないという意識が強くなるものです。教官は訓練生たちの様子を見ながら、これ以上は危険 だと判断すれば、水上訓練を途中で中断することもあるそうです。「訓練生の後ろには常に家族の存在があります。ですから、入学したときと同じように健康な状態で卒業させることが、私たちの使命だと思っています。もち ろん技術的に上達することも大切です。しかし事故を起こさず怪我をしないということが、競艇選手になるための大前提なのです」。
わずか1年という短期間でプロの競艇選手へと育て上げるために徹底的に指導するかたわら、子を思う親の気持ちを忘れることはありません。
教官にとって常に緊張が解けない仕事の中でも、6艇でスタートして6艇でゴールする競艇のごとく、日朝点呼と同じ人数が日夕点呼で揃った時が、数少ないホッとする瞬間なのです。

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